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光栄封神無印攻略


特技 ──ささやかな願いとその結果

西岐軍は、物資の補給と一般兵士たちの休息のため、一旦行軍を中止していた。
つかの間の平和。
(いつもこうならいいのに)
天幕の隙間から射し込むうららかな日差しを眺めながら、太公望は考える。
「よう、大将」
天化が大将の天幕に来るのは珍しい。
何かあったのだろうかと緊張したが、天化は当惑気な表情のまま、手に持っていたものを差し出した。
「符印?」
「今度の戦いで使えるもんはねぇかと漁ってたら、それが混じっててよ」
勝手に符印を漁るなとか、休める時くらい休んでおけとか。
言いたいことは色々あったが、その符印を眺めてみる。
「洞府の師匠たちがくれる札タイプじゃないね。数枚綴り……手順を踏んで発動するものみたいだ」
「見覚えがない装丁なんでな。万一、敵が混ぜてきた罠だとまずいだろ。ガキどもが触る前に持ってきた」
「うん」
天化のこういうところは流石だと思う。
(いつもこうならいいのに)
天気とは違う意味でちらりと考えたのは内緒だ。
慎重に封を剥がし、畳まれた紙を開いてみると、崑崙派特有の言葉遣いや決まり文句が並んでいる。
とりあえず、崑崙道士の作成したものには間違いなさそうだ。
次の紙にはこう書かれていた。

『これは、特技を追加する符印である』

「特技!?」
「おいおい、そんな術あったか!?」
弟にしきりに自分も特技が欲しいと言われていた天化も、思わず身を乗り出す。
二人の頭には、誰それにこんな特技があれば、という考えが色々と駆け巡ったが。
「おい」
「うん」
「「料理も特技か」な」
最後に浮かんだのは、同じだった。
あの壊滅的な結果が多少まともになれば……というささやかな希望は、あらがいがたい誘惑だった。
「何々、まず目を閉じて術を有効にしたい人を思い浮かべます」
ぽん、と二人の脳裏に浮かぶ顔。
「次に、与えたい特技を書きます」
それはもう、当然。
さらさらっと料理、と記入。
「続いて、この呪文を唱えます」
「なんだこりゃ。『にうよすまいなかがいがね』」
「最後に……」
めくった紙に、真ん中に一行。

『目を開けます』

顔を見合わせる太公望と天化。

最後の紙には、ダメ押しの走り書きがあった。
『なお、この符印は発動に失敗すると、その特技はマイナスになるので注意すること』
『by申公豹』

太公望が符印を天幕の外に投げ捨て、天化の朱雀がそれを焼き尽くした。

   ***

その日、軍の居留地には暗雲が立ち込め、西岐軍のほとんどが動けなくなるという一大事件が記録された。
大将と特攻隊長は、大戦の後になっても、その件については何故か黙して語らなかったという。

 

 

 

 

 

 


おしまい

 

 

 

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元ネタは、意味が分かると怖い話テンプレのアレです(笑)
現在の彼女の技術は、コレの影響によるものか、元々のものなのかはいまだに分からないとかなんとか。

しろたかるい様 小蓬莱

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